世界各地にリーマンショックの影響が残る2013年、尊敬するリーダー像について世界のCEOの意識調査が実施されました。ランキング上位には、世界的に知られる偉人たちの名が挙げられています。調査結果をふまえると、どんなリーダーが理想的か見えてくるかもしれません。そこで今回は、意識調査の概要やランキング上位になった偉人の人物像などをご紹介します。
世界のCEOの意識調査
世界のCEOに尊敬するリーダーを聞いた意識調査によると、ランキング1位はウィンストン・チャーチルでした。調査結果を見ると、とくに西欧諸国を中心に多くの支持を得ています。
調査の実施状況
2013年1月、尊敬するリーダーに関する世界のCEOを対象とした意識調査が実施されました。
調査機関は、プロフェッショナルサービスファームのPwC(プライスウォーターハウスクーパース)です。当機関は、例年、さまざまなテーマで世界のCEOの意識調査を実施し、その一環として2013年1月には誰が尊敬するリーダーか調べています。
ここでの調査対象は、世界68カ国・地域のCEO1437人です。最も尊敬するリーダーのほか、リーダーの条件やビジネスを成功に導くうえで必要となる要素についてインタビュー形式で回答しています。
調査の結果、世界のCEOからは尊敬するリーダーとして世界的に広く知られる人物の名前が数多く挙げられました。
ランキングトップ10
同上の調査で世界の名だたる人物のなかランキングトップ10に選ばれた顔ぶれは、以下の通りです。
1位:ウィストン・チャーチル
2位:スティーブ・ジョブズ
3位:マハトマ・ガンジー
4位:ネルソン・マンデラ
5位:ジャック・ウェルチ
6位:エーブラハム・リンカーン
7位:マーガレット・サッチャー
8位:ロナルド・レーガン
9位:ジョン・F・ケネディ
10位:ビル・クリントン
10位:ナポレオン・ボナパルト
ランキング1位から10位までは、多くの人々が歴史の授業やニュースで一度は聞いたことがあると考えられる名前が並んでいます。
調査結果の詳細
調査結果の詳しい内訳に目を向けると、人気の高さは地域差があり人物属性も若干の違いが見られます。
まず人気の高さに着目すると、ランキング1位を獲得したチャーチルは西欧諸国で高い支持率を誇りました。それに対し2位に続いたジョブズは、最多の37カ国で名前が挙がり幅広い地域で人気を得ています。
人物属性は、約6割の回答を占めたのが戦後の政治家や軍事的指導者です。その後はビジネスリーダーや歴史上のリーダーが続き、さらに作家、アーティスト、哲学者、スポーツ選手、宗教指導者や架空の人物も含まれます。
男女比を見ると、ランキングトップ10のうち女性は7位のサッチャーのみです。女性のリーダーは女性CEOから選ばれる傾向が強く、CEOの居住地域だけでなく性別も意識の違いを生んでいると理解できます。
チャーチルの人物像
世界のCEOが尊敬するリーダーの1位となったウィンストン・チャーチルは、第2次世界大戦時に英国の首相を務めた政治家です。苦しい戦況のなか自国を勝利に導き、英国内では高い人気があります。
勉強は不得意
もともとチャーチルは勉強が得意でなく、中高時代は学業で好成績を残せず苦労していました。
生誕の地は、イギリスのオックスフォードシャーにあるブレナムです。1874年、ブレナム宮殿で父ランドルフ・チャーチルと母ジャネット・ジェロームの長男として生まれます。
当時、父は保守党の政治家でした。その影響は大きかったと見られ、チャーチルも政治家を目指します。ただ学業が思わしくなく大学進学は難しかったため、軍人の道を進んだといわれています。
初当選は26歳
軍人として歩み始めたチャーチルが下院議員で初当選を果たしたのは、26歳のときでした。
大学進学から軍人志望へ進路を変更したチャーチルは、サンドハースト王立陸軍士官学校に入ります。軍隊での体験を記した記事や本は好評となり、ジャーナリストおよび作家としてもキャリアを築いていきました。
そんな経歴を重ねるなか、1900年に26歳で下院議員に初当選します。すでに大きな目標であった父は他界していたため晴れ姿を見てもらえませんでしたが、その後は多くの主要ポストを歴任しています。
政治家時代
政治家になってからのチャーチルは失敗続きであり、平坦といえる人生ではありませんでした。
第一次世界大戦中、海相として指揮した作戦は成功せず罷免されます。戦後の財務省時代には金本位制へ復帰しますが、今度はポンドの過大評価により経済の混乱を招きます。
さまざまな苦境を経験するなか1940年に引き受けたのが、英国首相の役職です。当時は第二次世界大戦が勃発し、英国は苦戦していました。それでもチャーチルは自国を勝利に導き、その功績は現在まで大きく称えられています。
調査から見える理想のリーダー像
ウィンストン・チャーチルをはじめ世界のCEOが選んだリーダーは、大きく分けると逆境克服型、大衆魅了型、改革者型、意識調整型、戦士型の5タイプです。この結果からは、理想のリーダー像が見えてくるかもしれません。
逆境克服型
逆境克服型に分類されている人物は、ウィンストン・チャーチルやエーブラハム・リンカーンです。タイプ名の通り、いずれも数々の厳しい境遇を乗り越えたことで知られています。
大衆魅了型
大衆魅了型に分類されている人物は、マハトマ・ガンジーやネルソン・マンデラです。両名とも、このタイプにふさわしく優れた思想や言動で多くの人々を魅了したといえます。
改革者型
改革者型に分類されている人物は、ジャック・ウェルチです。米国の著名な実業家であり、ゼネラル・エレクトリック社でCEOを務めたときの経営手腕から「伝説の経営者」と称えられています。
意識調整型
意識調整型に分類されている人物は、ビル・クリントンです。1993年に米国の第42代大統領に就任し、1996年に再選を果たすと2001年まで2期8年にわたり職務を遂行していきました。
戦士型
戦士型に分類されている人物は、ナポレオン・ボナパルトやアレクサンダー大王です。どちらも戦いの場において優れた手腕を発揮し、次々に勝利した逸話を残しています。
以上の結果をふまえ、同調査の関係者は世界のCEOが歴史を振り返りながらロールモデルを探し求めていると述べました。そのため上記5タイプは、世界のCEOが理想とするリーダー像を示している可能性があります。
まとめ
世界のCEOを対象とした意識調査によると、最も尊敬するリーダーのトップはウィンストン・チャーチルでした。さらにランキング上位には、世界の名だたる人物が並んでいます。
その多くは過去の偉人ですが、さまざまな功績や手腕を知れば現在も通用する理想のリーダー像が見えてくると考えられます。