シャンタヌ・ナラヤン氏は、世界的に知られるアドビでCEOを務めるインド生まれの人物です。同社への貢献度が大きく、ビジネス界で高く評価されています。幼少時に生まれ育った環境や学生時代の様子は、さまざまな功績を残してきた理由を教えてくれるでしょう。そこで今回は、ナラヤン氏のインドでの生い立ちやアメリカ留学後の経験などをご紹介します。
シャンタヌ・ナラヤンの生い立ち
アドビの会長兼CEOであるシャンタヌ・ナラヤン氏は、インド出身のインド系アメリカ人実業家です。
生まれ育った環境
シャンタヌ・ナラヤン氏はインドに生まれ、アーンドラ・プラデーシュ州などの州都であるハイデラバードで育ちました。大学まで、国内の学校に通っています。
ナラヤン氏は、プラスチック工場を経営する父と大学でアメリカ文学を教授する母との間に次男として誕生します。父・母・兄ともにアメリカ留学した経験があり、本人によると教育熱心な家庭でした。
出身地のハイデラバードはインドの南東部にあり、米国のシリコンバレーを思わせる光景が広がる街です。巨大なオフィスビルが連なり、「ハイテク・シティ」とも呼ばれています。
学生時代
学生時代は、学業とともに課外活動にも積極的でした。当時はジャーナリスト志望であり、高校や大学で雑誌編集に関わっています。
もともと、幼少期から好きだったのは書くことです。ナラヤン氏は、「自己表現の一環でしょうね」と振り返っています。これが、後のジャーナリスト志望につながったと考えられます。
高校生のとき、熱心に取り組んだ課外活動はディベートや校内雑誌の編集です。雑誌編集では、クイズなどの企画を担当します。またストーリーテリングにも大きな魅力を感じ、編集との関わりは大学時代まで続きました。
進路変更
ナラヤン氏はジャーナリストになりたいと思っていましたが、最終的な進路はエンジニアを選びました。
進路変更を決めた背景には、インドならではの事情があります。同氏の言葉を借りれば、インドで高等教育を受けると周りの期待にさらされるとの話です。ナラヤン氏の場合、家族をはじめ周囲はエンジニアか医者になることを望んでいました。
医者は安定した職業でしたが、本人は「血を見るのが恐くて」と告白しています。また大学在籍中から電子工学や情報工学の面白さに魅入られ、将来の進路としてエンジニアを選んだ様子です。
アメリカ留学へ
シャンタヌ・ナラヤン氏は、インドの大学卒業後も学業を積むため他の家族と同じくアメリカ留学します。
インドのIT業界
ナラヤン氏がインドの大学に通っていた時期は、1980年代の初め頃です。同国のIT業界は、黎明期にあったといわれています。
最近のインドは、2000年代以降の経済成長が著しいBRICSのひとつとして注目を集める国です。BRICSは、それぞれブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ共和国を指します。
ただ1980年代初頭、IT業界が現在ほど発展するとは予想されていませんでした。そのため国内では、同氏に限らずコンピュータサイエンスを志す学生の多くが卒業後に米国でも学んでいます。
国内大学との違い
ナラヤン氏は、アメリカ留学するなか大学のシステムについてインドと米国の違いを実感します。
インドの大学では、同氏が電子工学を専攻すると受講できる講義は限られました。それに対し米国の大学ではコンピュータサイエンスを専攻しますが、幅広い講義への参加が認められます。
同氏は、このシステムにより専攻分野と直接関係しない講義も受講できました。興味や意欲があれば数々の講義が選択可能であり、さまざまな経験を積めたため考え方がオープンになったと思うと述べています。
米国の大学卒業後
ナラヤン氏は米国の大学でMBAや修士号を取得すると、卒業後はアドビ入社前に複数の会社で働きました。
最初の就職先は、小さなスタートアップです。これに続きアップルコンピュータ(現アップル)やシリコングラフィックス(SGI)では、製品開発を担当します。さらに共同で、デジタル写真共有サービスであるピクトラも創業しました。
アドビへの入社を考えたのは、ピクトラ時代です。ピクトラとアドビの業務提携を通じ、アドビがデジタルイメージングの分野に力を注いでいると知ります。これを契機として、1998年からアドビへ移ります。
アドビでの経歴や功績
アドビに入社したシャンタヌ・ナラヤン氏は、さまざまな功績を残してきました。その成果は、ビジネス界で高く評価されています。
入社後の経歴
アドビでのナラヤン氏の経歴は、まずエンジニアリングテクノロジーグループのバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーから始まります。
入社から10年近くが経過する2005年には、社長兼COOに就任します。CEOに就任したのは、米国でサブプライムローン問題が起きた2007年です。翌年にはリーマンショックに見舞われる時期に、最高経営責任者として重職を担います。
CEO就任から10年後、米国でトランプ政権が発足した2017年に取締役会長になりました。他には、米印戦略パートナーシップフォーラムの副会長やPfizer社の役員なども務めています。
さまざまな功績
アドビに入社以来、ナラヤン氏が同社にもたらした功績は多大です。その指導力で大幅な収益増進が達成されただけでなく、職場は業界内で革新的と認知されます。
CEOとしての大きな成果のひとつは、いち早いクラウドベースのサブスクリプションモデル導入です。デジタルエクスペリエンスカテゴリーを創出し、その牽引役としてアドビを業界イノベーターへと変革しました。
さらに現在は、ドキュメントの生産性を加速させるとともにデジタルビジネスを強化するための戦略を推進しています。
周囲の評価
アドビにおけるナラヤン氏の功績に対し、ビジネス界では高く評価するケースが多く見られます。
いくつか実例を挙げると、Fortune誌の「最も称賛されている企業」や社員の口コミで決まるGlassdoorの「Top CEO」に選ばれました。これら以外にも、多くのメディアで世界有数の幹部の一人に認められています。
ナラヤン氏は生い立ちなどから分かる通りインドや米国で多くの有意義な経験を重ねており、これらがアドビでの多大な功績につながったのでしょう。
まとめ
シャンタヌ・ナラヤン氏は、アドビのCEOとして大きく会社に貢献しているインド出身の実業家です。さまざまな功績により、社内にとどまらずビジネス界では高い評価を得ています。
ナラヤン氏の考え方や業務姿勢は、アドビ入社以前に学んだことが大きく影響していると考えられます。これからCEOを目指すときなどは、同氏のインドでの学生時代やアメリカ留学後の過ごし方がいろいろと参考になるでしょう。