地産地消という考え方が注目され、各地で推進されるようになっているとは言っても、すべての食品をその地域で作り、消費するのは困難です。地域によって様々な食材を生産できないというケースもあり、各地から食材を集める必要があります。そこで、重要となるのが食品の流通。特に、生鮮食品等についてはスピードが命です。
そんな食品流通業界で大きな存在感を放っている企業が2004年に北海道・札幌を拠点に創業した、株式会社いずみホールディングスです。創業から一代で業界トップクラスの企業に成長させることに成功した、創業者の泉卓真氏。その経営哲学について、今回はご紹介します。
泉卓真氏が持つ明確なビジョン
経営において重要なのは、明確なビジョンです。どんなに有能なメンバーを集めて組織を作ったとしても、将来の明確なビジョン、目的がなければ成長・躍進はなし得ません。いずみホールディングスの泉卓真氏は、明確なビジョンを持ってビジネスを立ち上げ、そして成功へと導きました。
生産者の所得を1.5倍にして、日本の食卓の食費を1/2にする
同グループのビジョンは明確でわかりやすく、そして具体的なものです。それは「生産者の所得を1.5倍にして、日本の食卓の食費を1/2にする」というもの。理想を具体的な数字にすることによって、ゴールを目指しやすくしたのです。
ビジョンが曖昧で抽象的なものでは、適切に機能しない可能性があります。いずみホールディングスのビジョンにしても曖昧な部分があれば、ゴールとして成立しません。例えば「生産者の所得を増やし、日本の食費を減らす」というビジョンの場合は、具体性に欠けるため、組織自体がどのように動けばいいのか分からなくなります。
特に食品流通というビジネスは、多くの人を動かす必要があります。目的・ゴールを明確にすることが、人々の道標になると言えるでしょう。
いずみホールディングスでは、創業者の泉卓真氏が明確なビジョン、ゴールを設定して組織を導きました。それが、短期間でここまでの急成長に繋がったと考えられるでしょう。
食品流通の根本を理解した上での経営
泉卓真氏はもともと漁業の町に生まれ育ち、就職等を経て独立。そこではじめたのが「レストラン向けの卸売」です。これこそが、シンプルでもっとも根本的な食品流通の形です。実際に自分の身をもって流通の基本的な形を経験することで、深い理解を得られたと考えられます。自身で食品流通を体験することにより、生産者の抱える問題、そして全国の食卓が抱える問題を理解したのかもしれません
その結果として生まれたのが「生産者の所得を1.5倍にして、日本の食卓の食費を1/2にする」という明確なビジョンだと言えます。このように、根拠を持ってビジョンを立てられたからこそ、組織の人々に想いが受け入れられ、実現可能なものとして捉えられたのでしょう。
どんなに素晴らしいビジョンであったとしても、実現性がないものであれば組織はもちろん、人を動かすことはできません。そして、一般消費者にも受け入れてもらえないでしょう。あくまで、実現性があるものとしてビジョンを提示する必要があるのです。泉卓真氏は自らの経験によってビジョンを明確に組み立て、ビジネスに活かしたのだと言えます。
顧客のニーズを的確に把握して提供するというビジネスの基本に忠実に
顧客のニーズを把握し、提供するというのはビジネスの基本にあたります。どんなビジネスを展開するにしても、最初に考える必要があります。いずみホールディングスでもこの点は重要視されており、ビジネスに生かされています。具体例として、同社は食品流通の収益構造のイノベーションを行いました。
テクノロジーで解決する食品流通の問題
従来の食品流通には、様々な問題がありました。食品の流通は季節等によって不安定になってしまうことも多く、予定が立てにくいという問題があります。それによって価格が安定せず、生産者がしっかりとした利益を確保できない、といった明確な問題が存在したのです。いずみホールディングスは、これらの問題を最新のテクノロジーを活用することによって解決に導こうと挑戦しています。
顧客の求めていること、業界全体が抱えている問題をしっかりと把握することは、解決の糸口を見つけるのに重要なポイントです。当然それこそが、ビジネスの成功にも繋がります。ビジネスの基本に忠実に、顧客のニーズに応えることこそが、経営者にとっての大前提と言えるでしょう。
泉卓真氏の信念がビジネスを成功に導く
前述の通り、いずみホールディングスは食品流通業界に大きな革命を起こしました。しかし、食品流通という業界は古くから存在していたこともあり、古くからの慣習がいくつも存在していました。これらの業界とのしがらみは、いずみホールディングスにとって大きな障壁となりました。
古くから存在している業界や市場に参入する際に、様々なしがらみが横たわります。その中で理想やビジョンを掲げても、実現ができず、意味をなさないというケースも実際には少なくありません。
しかし、いずみホールディングスは先ほどご紹介したビジョン、信念を貫くことを徹底しました。泉卓真氏のブレない姿勢こそが、短期間で会社を成長させ、業界を変革した理由と考えられます。
しがらみに負けない信念
ブレずに信念を貫くということは、一見シンプルで簡単なことのように思えるかもしれません。しかし、それは決して簡単なことではなく、業界や市場のしがらみに折れて、慣習の中でのみビジネスを展開してしまうケースも少なくありません。短期的に考えれば、その方がビジネスとして稼ぎやすいからです。
しがらみや慣習等に逆らうということは、多くの対立にも繋がります。そして、作ってしまった対立はビジネスの障害になってしまう可能性もあるのです。それを恐れずに信念を貫きとおした点も、泉卓真氏が成功できた理由のひとつであると言えるでしょう。
もちろん、業界の内情に合わせて柔軟性を持ってビジネスを展開することも重要です。また、ビジョンが実現可能で多くの人々が求めるものに合致していなければ、戦っても無意味になってしまいます。
いずみホールディングスの場合は、ビジョンが実現可能であり、多くの人が求める需要と合致していたからこそ、信念を貫けました。また、ビジョンに対しての確信も必要です。泉卓真氏は自分の持っているビジョンが正しいものであるという確信を持てたという点も、大きなポイントのひとつでしょう。
泉卓真氏から学ぶ「成功するために必要な経営理念」とは
成功するためには、様々な要素が必要となります。特に既に多くの企業が参入し、市場が出来上がっている世界で成功するのは簡単なことではありません。いずみホールディングスは食品流通という古くから存在し、様々なしがらみが存在する業界に参入し、大きな成功を収められました。
今回はそんな成功を手にした泉卓真氏。明確なビジョンを持ち、それを強い信念を持って貫くことによって、いずみホールディングスは大きく成長できたと考えられます。
これからビジネスを展開したいと考えているのであれば今回ご紹介した経営理念や信念等を振り返ってみてはいかがでしょうか。きっとあなたのビジネスに役立つヒントを見つけられるでしょう。