世界のトップ企業で優れたCEOや社長の経営哲学が果たす役割は、小さくありません。これから、さまざまなジャンルのビジネスを成功に導くための大きなヒントを得られるでしょう。そこで今回は、コロナ禍など厳しい経営環境のなかでも多くの成果を上げてきた企業のCEOの経営哲学などをご紹介します。

コロナ禍に屈しないトップ企業のCEO

世界のトップ企業を指揮するCEOの経営哲学は、コロナ禍に屈しない考え方として参考になるでしょう。

ジェニファー・ハイマン

ジェニファー・ハイマンは、アメリカにあるファッションレンタル大手レント・ザ・ランウェイのCEOです。

2020年3月に新型コロナウィルスの感染が世界的に広がると、アメリカ国内でも人々がファッションを楽しむ雰囲気は薄れたといわれています。洋服のレンタルサービスも無縁でなく、同社は次々と会員が解約する事態に見舞われました。

そんな状況下で力を発揮した経営哲学が、思いがけず手に入れた休止期間を無駄にしない考え方です。この哲学にもとづき、これまで職場がフル稼働しているなかでは不可能だった業務システムを大幅に改善していきます。

価格モデルから既存の配送施設まで幅広く見直し、人々が徐々に消費活動を再開すると同社の事業は著しく回復していきました。

ダニエル・エク

ダニエル・エクは、いま音楽ストリーミングの分野で最大手と評されるスポティファイのCEOです。

創業当時、音楽業界は海賊版が世間に広まっていた影響もあり窮地に追い込まれていました。そんな状況のもと、当CEOはリスナーに対して海賊版より勝る音楽体験を提供する技術を開発する必要があると考えます。

この経営哲学の実践により同社の事業は成功し、窮地にあった音楽業界を復活へと導きました。コロナ禍でも何が必要か考える姿勢は変わらず、独自の視点から事業を進めていきます。

何より同社の強みは。音楽とサウンドに特化した業界トップクラスといわれる優れた人材です。現在も、この分野の人材採用には力を入れています。

アンジャリ・スッド

アンジャリ・スッドは、デジタル動画に関わる多彩なサービスを提供しているビメオのCEOです。

同社は、創業当初から動画配信サービスなどを世界的に展開する大手企業と競合する環境にありました。そんな状況のなか、CEOは将来的なビジョンについてエンターテインメントでなく起業家を支えることに焦点を向けようと考えます。

当CEOの言葉を借りると、同社の大きな武器はユーザートレンドです。コロナ禍でも同社のサービスを活用するユーザーのトレンドに着目しながら、さまざまな事業を展開していきます。

これまでの業績によりビメオはテック企業の花形へと成長し、スッド自身は上場テック企業の数少ない女性CEOになりました。

ネイサン・ブレチャージク

ネイサン・ブレチャージクは、民泊仲介サイトの大手として知られるエアビーアンドビーのCEOです。

もともと、同社は3人の創業者が立ち上げたアプリから始まりました。当時は、利用者数と物件数のいずれに焦点を当てるか経営ビジョンの方向性について迷っていたといわれています。

そこで当CEOの手がけた作業が、人気市場であったニューヨークやサンフランシスコのデータ分析です。コロナ禍のなか慎重なデータ精査により物件数と需要の相関関係を確認し、全米で成長する方針から重要な観光都市に集中する姿勢へ切り替えます。

この手法は大きな成果を上げ、同社は現在の時価総額が1,000億ドル(約11兆円)を超える民泊市場のトップ企業に成長を遂げました。

ジョシュ・シルバーマン

ジョシュ・シルバーマンは、小売市場の分野で手作り品などの電子商取引サイトを運営するエッツィーのCEOです。

これまで小売市場は、世界的に有名な巨大企業の独壇場になっている分野と見られていました。その隙間部分を見つけ出し、同社は手作り品やビンテージ品の電子商取引サイトの運営を開始します。

ここで重視された経営哲学が、「逆のことをする」考え方です。コロナ禍で人々が外出を控えるなか当CEOはユニークな手作り品の需要が高まると考え、大手による大量生産品の安価な販売とは異なる人間味の感じられる商取引を展開していきます。

同社の販売スタイルは自宅で過ごす時間が増えた人々のニーズに応え、2020年の売上高を前年比の111%に伸ばしました。

国内企業のCEOにも注目

国内で注目したいのは、リーマンショック、東日本大震災、消費税増税などの影響で経営危機に直面した企業を立て直してきたCEOの経営哲学です。

小山昇

小山昇は、大規模災害や消費税増税で経営が厳しくなるなか増収増益を確保し続けてきた株式会社武蔵野の社長です。

社長の考えによれば、会社が危機的状況になっても揺るがないと自負する理由は「社長の価値観を全社員が共有している」ためです。どんな事態に見舞われても会社が一丸になって動けることが、大きな強みと認識しています。

価値観の共有を具体的に実践している作業が、「朝一番の掃除」です。毎朝30分、環境整備として全社員による掃除を続けています。日々の繰り返しにより、当人の社長就任時には約7億だった年商は2014年時点で約48億円に伸びました。

厳しい経営環境のなかでの大幅な増収増益は評価が高く、そんな成果を生み出した武蔵野の経営哲学は注目に値すると考えられます。

豊崎賢一

豊崎賢一は、回転寿司の業界で競合他社との激しい競争を勝ち抜いた「スシロー」の社長です。

いまでは業界トップとも評される回転寿司チェーン「スシロー」は、もともと一軒の寿司屋にルーツがあります。寿司屋は、社長自身がアルバイトとして働き始めた翌年から回転寿司の業界に参入しました。

参入当初から、この寿司屋の創業者がこだわったのは「味」です。まだ回転寿司が「安かろう悪かろう」と見られていた時期に、世間的な評価とは異なる考え方で新規事業を進めます。

創業者の「どんな商売でも、長く続いているのは、値打ちのあることをやり続けるところ」との経営哲学は、現社長にも引き継がれていきました。試行錯誤を繰り返しながらも値打ちのある商売を続け、やがてスシローは業界トップの地位を獲得します。

まとめ

世界有数の企業を指揮するCEOの経営哲学は、これまで多方面のビジネスを成功に導くうえで重要な役割を果たしてきました。上記の通り、コロナ禍を事業改善の好機として活用するケースも知られます。いま企業の運営方法に悩んでいる場合などは、一度、いろいろな経営哲学を再確認してみてもよいかもしれません。